わとかの革に抜群の強度と豊かなエイジングが共存する理由

繊維が厚く丈夫なステアレザー(成牛革)を厳選。
わとかは、食肉の副産物として生まれる成牛の皮を、日本の職人が丹念に鞣(なめ)して革に仕上げています。
牛の皮は、人の肌と同じように年を重ねることで厚みを増し、より丈夫になります。
そのため、同じ条件で比べると、ステアレザー(成牛の革)は、一般的に高級とされるカーフレザー(子牛の革)やキップレザー(若牛の革)よりも耐久性が高くなるのです。
そんな繊維層が厚く丈夫な成牛の皮の中から、カーフやキップと同等のきめ細かさを持つものを厳選し、非常に手間のかかる特殊な方法で鞣し上げています。

2つの成分を使うヘビーレタン鞣し。強度とエイジングを両立。
その特殊な鞣し製法は「ヘビーレタン鞣し」と呼ばれます。
これは、まったく性質の異なる2つの成分「クロム」と「タンニン」を別々に使い、2度の鞣しを行う極めて手間のかかる方法です。
この鞣しによって、タンニン鞣しの革(ヌメ革)よりも丈夫でありながら、ヌメ革のように経年変化を楽しめる革が実現します。
クロムが約10倍もの結合力を発揮。
この鞣しでは最初に、人の体にも必要なミネラルである「クロム(三価クロム)」を使い、「皮」を「革」へと変えていきます。
ひじきやあさりにも含まれるクロムは、革の繊維と非常に強い結合(配位結合)を形成します。
この結合は、化学的に見るとタンニンと革が形成する結合(水素結合)と比べて約10倍の強度を持ちます。
この結合力によって、わとかの革は、タンニンのみで鞣されるヌメ革やコードバン、ブライドルレザーよりも高い強度を備えた革になります。

クロムの強さに支えられ、タンニンが革のエイジングを引き出す。
しかし、クロム単体の鞣しでは、どうしても自然な質感や経年変化を引き出すことができません。
そこで登場するのが、お茶やコーヒー、ワインにも含まれる植物成分「タンニン」です。
栗やミモザなどの樹木から抽出したタンニンを使い、革に2回目の鞣し「タンニン鞣し」を施していきます。

ただし、行うのは一般的なタンニン鞣しではありません。
通常の約3倍もの時間をかけて、飽和状態になるまで革にタンニンを染み込ませています。
これがヘビーレタン鞣しと呼ばれる所以で、「ヘビー」は「重く」、「レ」は「再び」、「タン」は「鞣す」を意味します。
この工程により、自然由来の素朴な質感が引き出されるだけでなく、タンニンの収斂性(しゅうれんせい:繊維を収縮させる性質)が革の芯まで作用し、繊維がギュッと密に詰まります。
こうして、クロム鞣しによる耐久性と弾力性を備えながら、ナチュラルな表情と経年変化を楽しめる革が完成するのです。

なぜ革は味わい深くエイジングするのか。
タンニンで鞣された革は、可塑性(かそせい)という「形状を記憶しやすい性質」が強くなるのが大きな特徴です。
実はこれが、革が艶やかな質感に変わる主な要因です。
革製品に触れるたびに、表面には摩擦(平にならそうとする力)が生じます。
この摩擦と可塑性の働きによって、表面の細かな凹凸が徐々にならされ、革はなめらかで美しい艶を帯びていきます。
さらに、タンニン鞣しの革は質感の変化に加えて、色の変化も引き起こします。
樹齢を重ねる木々が色に深みを増すように、革に含まれるタンニンが空気や紫外線と反応(酸化)し、より深い色合いへと変化していきます。
こうして、使い込むほどに色合いに深みを増し、美しい艶を帯びた革へと育っていくのです。

卓越した日本の職人による革づくりの技術。
「鞣し」は、革づくりの工程の一つに過ぎません。
鞣しの前後には、毛抜き、フレッシング、中和といった多くの工程が存在します。
中には、クロム鞣しが終わった状態の革を仕入れ、染色や仕上げのみを施してつくられる革も多く見られます。
しかしわとかは、より良い革を追求するため、牛の原皮を厳選し、毛を抜く工程から日本の熟練職人が手がけています。
最初から最後まで積み重ねられる卓越した技術によって、抜群の丈夫さを持ちながら、革本来の風合いと経年変化を長く楽しめる革が完成するのです。